
「進行性だから、何をしても無駄だ」 「安静にしていないと、余計に悪くなるんじゃないか」
診断を受けた時、あるいは症状が進んできた時、そんな誤解をしてしまう方は非常に多いです。 生物学的に見ても、「進行性=何もできない」わけではありません。
確かに、現代医学ではまだ病気の原因を完全に消し去ることは難しいのが現状です。 しかし、「病気の進行スピード」と「身体機能の低下スピード」はイコールではありません。
私たちの体には、使わない機能は捨てる(廃用)という冷酷なルールと、使えばネットワークを再構築する(可塑性)という希望のルールがあります。 この2つのルールをうまく利用することで、進行の時計の針を遅らせることは十分に可能です。
この記事では、今日からご家庭で実践できる「進行を遅らせるための7つの具体的な対策」について解説します。
脊髄小脳変性症の進行を遅らせる|日常生活で今すぐできる7つの対策
「薬を飲む以外に、自分にできることはないのか」 そう思われている方へ。実は、毎日の生活の中にこそ、進行を食い止める鍵があります。
これから紹介する7つの対策は、医学的な根拠に基づいた「守りの戦略」です。 これらを組み合わせることで、動ける期間を年単位で延ばせる可能性があります。
対策1:短期集中リハビリで「貯筋」する
リハビリは、この病気において薬以上に重要な「治療」です。 「疲れるからやらない」のではなく、「動かないと、病気以上のスピードで体が錆びつく(廃用症候群)」ことを知ってください。
- 効果: 4週間程度の集中的なリハビリを行うことで、運動失調の程度(SARAスコア)が改善し、その効果が半年から1年程度持続するというデータがあります。
- 考え方: 病気でマイナス1になるとしても、リハビリでプラス1にできれば、実質的な機能低下はゼロに近づけます。これを繰り返すことで、進行カーブを緩やかにします。
対策2:薬(タルチレリン)を正しく使う
現在、日本には世界に先駆けて承認された治療薬があります。 「どうせ治らないから」と自己判断で中断せず、医師の指示通りに服用することが大切です。
- タルチレリン(セレジスト): 脳内の神経伝達物質の放出を促し、神経細胞を活性化させます。長期的な使用によって、症状の悪化を緩やかにする可能性が示唆されています。
- その他の薬: 足のつっぱりには筋弛緩薬、パーキンソン症状にはレボドパなど、症状に合わせた薬を使うことで、動きやすさを確保します。
対策3:転倒を徹底的に防ぐ(環境整備)
「転んで骨折し、入院したらそのまま歩けなくなった」 これは最も避けなければならない、進行の加速パターンです。骨折による安静は、一気に筋力を奪います。
- 環境整備: 「気をつける」という精神論ではなく、「手すりをつける」「段差をなくす」「カーペットを固定する」といった物理的な対策を行いましょう。
- 道具の使用: 杖や歩行器を早めに導入することは、敗北ではありません。転倒リスクを減らし、活動量を維持するための「武器」です。
対策4:誤嚥性肺炎をブロックする(口腔ケア)
進行期において、寿命を縮める最大の要因は「誤嚥性肺炎」です。 肺炎を起こすと体力がガクンと落ち、そこから寝たきりになるケースが多くあります。
- 食事形態: 飲み込みにくいものはとろみをつけるなど、嚥下機能に合わせた食事を心がけます。
- 口腔ケア: 誤嚥しても肺炎になりにくくするために、口の中を清潔に保ち、細菌を減らしておくことが極めて重要です。
対策5:感染症を予防する
風邪、インフルエンザ、尿路感染症などにかかると、一時的にふらつきが酷くなることがあります。 これをきっかけにガクッと機能が落ちることがあるため、体調管理は進行抑制の一部です。
- 水分摂取: 特に尿路感染症を防ぐために、適切な水分摂取を心がけましょう。
- ワクチン: インフルエンザや肺炎球菌のワクチン接種を検討してください。
対策6:栄養管理(ビタミン・CoQ10)
特定の栄養素が神経を守る可能性があります。
- コエンザイムQ10: 多系統萎縮症(MSA)の方では、大量療法によって進行抑制効果があるかどうか、治験が進められています。主治医に相談してみるのも一つの手です。
- バランスの良い食事: 神経の働きに必要なビタミンB群などを意識して摂取しましょう。
対策7:「治るタイプ」ではないか再確認する
ごく一部ですが、治療によって進行を完全に止められるタイプがあります。これを見逃していると大変もったいないことです。
- ビタミンE単独欠乏性失調症(AVED): ビタミンEの大量投与で進行が止まります。
- 確認: 血液検査でビタミンEの濃度などを一度確認しておくと安心です。
まとめ
進行を遅らせるための7つの対策を振り返ります。
- リハビリ: 「動かないことによる悪化」を防ぐ最強の手段。
- 薬: 神経のスイッチを入れる薬を継続する。
- 転倒予防: 骨折による寝たきりを物理的に防ぐ。
- 誤嚥対策: 肺炎を防ぎ、体力を温存する。
- 感染症予防: 一時的な悪化(ガクッとした低下)を防ぐ。
- 栄養管理: 神経を守る栄養素を摂る。
- 除外診断: 治療可能なタイプを見逃さない。
「病気そのもの」と戦うのは新薬の役割ですが、「生活の質」を守り抜くのは、あなたの日々の行動です。 今日からできることを一つずつ、積み重ねていきましょう。
脊髄小脳変性症の鍼灸外来
一般的な鍼灸院では行わない「体の状態を客観的に捉える方法」です。
足部の温度変化を確認する検査の一例
「診断はついた。けれど、今の自分の状態がどうなのかは、よくわからない」
「薬を続ける以外に、何を意識すればいいのか、誰も教えてくれなかった」
私たちは、こうした行き場のない不安を抱える患者さんと40年間向き合ってきました。
当院では、サーモグラフィで全身の体温分布を可視化します。
脊髄小脳変性症の方では、
ご本人が感じている歩きにくさやふらつきと一致する形で、
手足の温度分布に左右差が見られることがあります。
その一致を一緒に確認することで、
「なぜ今の動きにくさが出ているのか」を整理する手がかりになります。
この検査には専門機器と解析技術が必要なため、一般的な鍼灸院で行われることはまずありません。 感覚や印象だけに頼らず、今の体の状態を落ち着いて見つめたい方のための情報提供の場として、 ご相談をお受けしています。
参考文献
- すべてわかる神経難病医療(中山書店)
- 運動失調のみかた、考えかた‐小脳と脊髄小脳変性症‐(中外医学社)
- 脳神経内科2025特集Ⅱ脊髄小脳変性症・多系統萎縮症(科学評論社)
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