
「検査を受けるべきか、受けないべきか」 これは、単なる医学的な検査の枠を超えた、人生の選択に関わる問いかけです。
「白黒はっきりさせたい」という気持ちと、「知るのが怖い」という気持ち。その間で揺れ動くのは当然のことです。 生物学的に見れば、遺伝子検査は、あなたの体にある「設計図の一部」を医学的な目的で確認する作業です。それによって病気のタイプ(型)が確定し、将来の予測が立ちやすくなるメリットがあります。
しかし、そこには費用や、ご家族への影響といった現実的な課題も伴います。 この記事では、遺伝子検査の具体的な費用、受けられる場所、そして決断する前に知っておくべきメリット・デメリットについて解説します。
迷っている方の、判断材料の一つになれば幸いです。
1. 遺伝子検査で何がわかるのか
脊髄小脳変性症には多くのタイプがありますが、そのうち約30%は「遺伝性」です。 遺伝子検査では、血液(白血球)からDNAを抽出し、設計図の中に特定のエラー(塩基配列の異常な繰り返しなど)があるかを調べます。
確定診断ができる主な病型
日本では以下のタイプが多いため、これらを特定するために行われます。
- マシャド・ジョセフ病(SCA3)
- SCA6
- SCA31
- DRPLA(歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症)
これらが判明することで、「今後どのような経過をたどるか(進行速度など)」がある程度予測できるようになります。
2. 費用はいくらかかる?保険は使える?
遺伝学的検査は、確定診断を目的とする場合に、公的医療保険で行われることがあります。
ただし、保険適用の条件や検査できる範囲は、症状や診断目的、医療機関によって異なります。
実際に検査が可能かどうか、どこまで調べられるかについては、主治医とよく相談することが大切です。
- 費用の目安: 費用は、検査する項目数や医療機関、保険適用の有無で変わります。目安としては2万円台〜数万円になることが多く、別途「遺伝カウンセリング」の費用がかかる場合もあります。(詳細や適用条件は、必ず受診先の医療機関で確認してください)
- 難病医療費助成: すでに指定難病の認定を受けている方(あるいは申請と同時の方)は、「特定医療費受給者証」を利用することで、所得に応じた月額自己負担上限額の範囲内で受けられる場合があります。
注意点:遺伝カウンセリング料
検査そのものとは別に、「遺伝カウンセリング」の費用がかかることがあります。 施設によっては保険診療(加算)でカバーされますが、場合によっては自費診療(数千円〜1万円程度)となることもあります。受診前に病院へ確認することをお勧めします。
3. どこで受けられる?受診の流れ
まずは、現在通院中の神経内科で「遺伝子検査を考えている」と相談します。
院内で実施できない場合でも、専門施設へ紹介されたり、検体(血液)を連携して解析する形で検査が進むことがあります。
また、場合によっては厚生労働省研究班の枠組み(J-CAT)を通じて、遺伝子検査に関する情報提供や相談窓口が案内される場合もあります。
具体的な対応は医療機関によって異なるため、主治医とよく相談することが大切です。
受診のステップ
- かかりつけ医に相談: まずは現在通院している神経内科の先生に「遺伝子検査を考えている」と伝えてください。
- 専門施設へ紹介: その病院で検査ができない場合でも、検体(血液)を解析可能な大学病院や検査センターに送ることで検査が可能です。
- 遺伝カウンセリング: 必要に応じて、院内の「遺伝子医療部門」や「遺伝カウンセリング外来」を紹介され、専門家と話をする場が設けられます。
4. 受けるべきタイミングと「知る権利・知らない権利」
「検査ができるなら、すぐに受けた方がいいのか?」 これには、あなたが現在「症状があるか(発症しているか)」によって答えが異なります。発症前診断は、医学的判断であると同時に、人生設計に深く関わる選択でもあります。
ケースA:すでに症状がある方(診断目的)
ふらつきなどの症状があり、脊髄小脳変性症と診断されている場合は、検査を受けるメリットが大きいと言えます。
- メリット: 病型が確定することで、進行速度の予測や、合併症の対策が立てやすくなります。また、難病申請の際に診断の根拠となります。
ケースB:症状がない血縁者の方(発症前診断)
「親がこの病気だから、自分も持っているか知りたい」という、まだ症状がないお子さんやご兄弟の場合、話は非常にデリケートになります。
- 慎重な判断が必要: これを「発症前診断」と呼びます。現在の医学では、発症前に分かっても予防法がありません。「将来発症する」という事実を知る心理的負担は計り知れません。
- 知らないでいる権利: 一度知ってしまった情報は消せません。就職、結婚、保険加入など、人生設計に影響を与える可能性があります。
まだ症状のないご家族、とくに未成年の発症前診断は原則として慎重に扱われます。結果が人生設計に与える影響が大きいため、実施する場合でも遺伝カウンセリングを含めて十分な検討が必要です。
まとめ
- 何がわかる: 自分の病型(SCA3, SCA6など)が確定し、将来の予測が立ちやすくなる。
- 費用: 保険適用で数万円程度。難病助成が使える場合もある。
- 場所: 大学病院や総合病院の神経内科。
- 注意点: 症状がない血縁者の検査(発症前診断)は、人生を左右するため極めて慎重に行うべき。
検査を受ける/受けないは、どちらが正しいという話ではありません。「不安を減らすために、今の自分に必要な情報は何か」を一緒に整理するところから始めてください。
脊髄小脳変性症の鍼灸外来
一般的な鍼灸院では行わない「体の状態を客観的に捉える方法」です。
足部の温度変化を確認する検査の一例
「診断はついた。けれど、今の自分の状態がどうなのかは、よくわからない」
「薬を続ける以外に、何を意識すればいいのか、誰も教えてくれなかった」
私たちは、こうした行き場のない不安を抱える患者さんと40年間向き合ってきました。
当院では、サーモグラフィで全身の体温分布を可視化します。
脊髄小脳変性症の方では、
ご本人が感じている歩きにくさやふらつきと一致する形で、
手足の温度分布に左右差が見られることがあります。
その一致を一緒に確認することで、
「なぜ今の動きにくさが出ているのか」を整理する手がかりになります。
この検査には専門機器と解析技術が必要なため、一般的な鍼灸院で行われることはまずありません。 感覚や印象だけに頼らず、今の体の状態を落ち着いて見つめたい方のための情報提供の場として、 ご相談をお受けしています。
参考文献
- すべてわかる神経難病医療(中山書店)
- 新・遺伝医学やさしい系統講義(メディカルサイエンスインターナショナル)
- 神経難病の病態・ケア・支援がトータルにわかる(照林社)
当院までのルートを詳しく見る
関東方面からお越しの場合
バスで
電車で
バスで
電車で
バスで
電車で
バスで
電車で
北陸・東海方面からお越しの場合
バスで
電車で
バスで
電車で
バスで
電車で
バスで
電車で