脊髄小脳変性症の進行速度|「ゆっくり」は本当?症状が進むスピードの真実

脊髄小脳変性症|症状が進む速度の真実を解説

はじめに

病院で脊髄小脳変性症と診断されたとき、お医者さんからこう言われませんでしたか?
「この病気は、進行がとてもゆっくりですから、あまり心配しすぎないでくださいね」

この言葉を聞いて、「ああ、すぐに歩けなくなるわけじゃないんだ」と少しホッとした方も多いと思います。
でも、時間が経つにつれて、「ゆっくりって言われたけど、本当に大丈夫なのかな?」「何もしなくていいのかな?」と不安になっていませんか?

実は、お医者さんが言う「ゆっくり」には、医学的な「比較」の意味が含まれています。

この言葉を「何もしなくても大丈夫」と勘違いしてしまうと、本来維持できるはずの運動機能を落としてしまうことになりかねません。

このページでは、40年間この病気の治療に向き合ってきた私たちが、「進行速度の真実」と、「進行がゆっくりだからこそ、今やるべきこと」について、わかりやすく解説します。

医師が言う「進行がゆっくり」の本当の意味

遺伝性の脊髄小脳変性症は多系統萎縮症と比べると進行がゆるやか

なぜ、お医者さんは「進行がゆっくり」と言うのでしょうか。
それは、「多系統萎縮症(たけいとういしゅくしょう)」という、別の病気と比べているからです。

脊髄小脳変性症のグループの中には、「多系統萎縮症」というタイプがありますが、こちらは進行がとても速く、発症から5年ほどで車椅子が必要になることが多いです。

これに対して、遺伝性の脊髄小脳変性症などは、10年、20年経ってもご自分の足で歩いている方がたくさんいます。

つまり、お医者さんは「(一番進行が速いタイプと比べると)ゆっくりですよ」という意味で伝えているのです。

「ゆっくり」というのは、「新幹線」ではなく「各駅停車」のようなものです。
スピードは違っても、少しずつ進んでいることに変わりはありません。

ですが、各駅停車は途中で長く停車したり、メンテナンスをしたりする時間がたっぷりあるので、その間に体を整えれば、次の駅(症状の段階)へ進むのを大幅に遅らせることができるのです。

「ゆっくりだから安心」して何もしないのではなく、「スピードが遅いうちに、できる対策をしておく」ことがとても大切です。

遺伝性脊髄小脳変性症の進行速度はどれくらいか

日本人に多い型の脊髄小脳変性症の進行速度

では、具体的にどれくらいのスピードで進むのでしょうか。 これは「どのタイプ(型)か」によって大きく違います。日本人に多いタイプを例に見てみましょう。

1. とてもゆっくりなタイプ(SCA6、SCA31など)

日本人に多い「6型(SCA6)」や「31型(SCA31)」は、進行が非常にゆっくりです。

  • 特徴: 高齢になってから発症することが多いです。
  • スピード: 発症から10年経っても、杖を使わずに歩いている患者さんも多くいらっしゃいます。
  • 予後: 飲み込む力(嚥下機能)も保たれやすく、天寿を全うされる方も多いです。

2. ややゆっくりなタイプ(マシャド・ジョセフ病など)

日本で一番多い遺伝性のタイプ(SCA3)です。

  • スピード: 上記のタイプよりは少し速い傾向があります。
  • 目安: 個人差はありますが、車椅子が必要になるまで発症から10年〜15年くらいかかることが多いです(多系統萎縮症の約2倍の期間です)。

このように、多くの遺伝性タイプでは、数年ですぐに寝たきりになるようなことは稀です。「歩ける時間」は、皆さんが思っている以上に長く残されています。

進行速度に個人差がある理由

脊髄小脳変性症の進行速度は生活習慣などで異なる

同じ病気、同じタイプでも、人によって進行の速さが全然違うことがあります。なぜでしょうか?

1. 発症した年齢
一般的に、若い頃に発症するほど進行が速く、高齢になってから発症するほど進行がゆっくりになる傾向があります。

2. 生活習慣とリハビリ
これが最も重要です。 「病気だから」と家に閉じこもって体を動かさない人と、積極的に体を動かしてケアをしている人では、数年後の状態に大きな差が出ます。

小脳が指令を出せなくなっても、筋肉自体は元気なことが多いです。しかし、使わなければ筋肉はあっという間に弱ってしまいます。

進行が速いと感じる場合、実は病気そのものの悪化だけではなく、動きにくさによって筋肉を使わなくなる「二次的な機能低下」が原因であることも少なくありません。
これを「廃用症候群」と言います。

逆に言えば、この部分はリハビリやケアによって改善の余地が大きく残されている部分でもあります。

「ゆっくり進行」だからこそ今できることがある

「進行がゆっくり」ということは、「対策をするための時間がたっぷりある」ということです。

病院では「治療法がないので経過を見ましょう」と言われることが多いですが、私たちはそうは考えません。

小脳が萎縮(縮むこと)するのを止める薬はまだありませんが、「今ある機能を最大限に活かす」ことはできます。

体のバランスを整える重要性

小脳が弱ると、体のバランスが悪くなり、姿勢が崩れます。すると、余計な場所に力が入り、動きがガチガチになってしまいます。

私たちは、独自の視点で「インナーマッスル(姿勢を支え、体幹の安定を司る深層の筋肉)」に働きかけるアプローチを行っています。

体の深い部分にある筋肉を刺激し、バランス感覚を整えることで、 「足が前に出しやすくなった」 「ふらつきが減って安定して歩ける」 と感じる患者様はたくさんいらっしゃいます。

これは、病気そのものを治す魔法ではありませんが、リハビリや専門的な施術によって、低下した機能を呼び覚まし、進行のスピードを上回るペースで体の動きを改善させていくことは十分に可能です。

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進行速度を理解して、今から対策を

お医者さんの言う「進行がゆっくり」は、決して気休めではありません。あなたには、これからの生活を守るための「時間」が与えられています。

  • 「ゆっくり」は「何もしなくていい」という意味ではありません。
  • 「ゆっくり」は「対策をする猶予がある」というチャンスです。

もし今、「少し歩きにくいな」「ふらつくな」と感じているなら、ただ様子を見るのではなく、積極的に体のケアを始めてみませんか?

40年の経験を持つ私たちが、あなたの「歩きたい」という気持ちを全力でサポートします。
一人で悩まず、まずは私たちにご相談ください。

当院の専門的な施術で、実際にどのように症状が変化するのか。詳しくは以下のページをご覧ください。
脊髄小脳変性症は、鍼灸治療で良くなりますか?|難病の鍼灸治療

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Profile

院長 / 吉池 弘明

お医者様の治療法が確立されていない難病の鍼治療に取り組み40年。 悪化や進行の原因になることが多い自律神経異常を、お医者様とは異なる検査【医療用サーモグラフィ】で、のべ25万人を検査する。 全国から検査を希望する患者様の来院が絶えず、日々新たな治療法を模索し続けている。 「はり・きゅうの日生まれ」62歳。

院長 / 吉池 弘明