脊髄小脳変性症6型の特徴とは?眼球運動障害と進行パターンを解説

脊髄小脳変性症|SCA6で起こる眼球運動障害や特有の症状を詳しく解説

「脊髄小脳変性症6型(SCA6)」

この診断を受けた方の中には、40代〜50代でお仕事や家庭の中心として忙しくされている方も多くいらっしゃるでしょう。

突然の難病告知に、これからどうなってしまうのかと不安になるのは当然のことです。 ですが、この「6型」は、他の脊髄小脳変性症と比べて少し特殊な特徴を持っています。 それは、「進行が比較的ゆっくり」であり、主に小脳症状が中心となる「純粋小脳型」に分類されます。

この記事では、SCA6という病気がどのようなものなのか、特に6型で一番の悩みになりやすい「目の症状」と「これからの経過」について、分かりやすく解説します。

1. 40〜50代で発症する「純粋小脳型」

まずは、この病気の基本的な特徴を押さえておきましょう。

1-1. 日本で2番目に多いタイプ

SCA6は、遺伝性の脊髄小脳変性症の中で、マシャド・ジョセフ病(SCA3)に次いで日本において頻度の高い遺伝性脊髄小脳変性症の一つです。 特に西日本にお住まいの方に多い傾向があると言われています。

1-2. 発症は少し遅めの40〜50代

多くの遺伝性のタイプが20代や30代で発症するのに比べ、SCA6は平均し40代〜50代(平均45歳前後)で発症します。 働き盛りで、責任ある立場になった頃に、「なんとなくふらつく」「呂律が回りにくい」といった症状が出始めます。

1-3. 余計な症状が出にくい

SCA6の最大の特徴は、「純粋小脳型(じゅんすいしょうのうがた)」であることです。 これは、小脳の神経細胞(プルキンエ細胞)だけが選択的に弱ってしまうため、症状がほぼ「ふらつき(運動失調)」と「喋りにくさ(構音障害)」に限られるということです。 他のタイプ(SCA3など)で見られるような、筋肉のつっぱりやパーキンソン症状、自律神経のトラブルなどは、原則としてあまり目立ちません。

2. 6型最大の特徴「眼」の症状

脊髄小脳変性症6型は眼振などが現れやすい

「なんだか景色が揺れて見える」 「寝返りを打つと目が回る」

もしそんな症状があるなら、それはSCA6特有の「眼(め)」の症状かもしれません。

2-1. 眼振(がんしん)と動揺視

SCA6の患者さんの80%以上に見られるのが、目を動かした時に眼球が細かく揺れる「眼振」です。 特に特徴的なのが、「下向き眼振(下眼瞼向き眼振)」です。 横を見たり、頭の位置を変えたりした時に、目が下に向かって細かく揺れる現象で、これが診断の重要な手がかりになります。

この目の揺れのせいで、見ている景色がグラグラと揺れて見える「動揺視(どうようし)」を訴える方が非常に多く、初期の段階でも約半数の方に見られます。

2-2. めまい感

SCA6は発症初期にメニエール病のような強いめまいを感じることがある

発症初期に、寝返りを打ったり急に振り向いたりした時に、グルグルと回るような強いめまいを感じることがあります。 そのため、最初は「メニエール病かな?」と思って耳鼻科を受診される方も少なくありません。

3. 進行はゆっくり。寿命も保たれます

「これからどうなってしまうの?」 一番の不安はそこだと思いますが、ここが少し安心できるポイントです。

3-1. 進行スピードは遅い

SCA6の進行は、他の遺伝性タイプ(SCA1, SCA2, SCA3など)と比べても、非常に緩やかです。 症状が進むスピードは遅く、急激に悪くなることは稀です。

3-2. 天寿を全うできる

生命予後は良好で、この病気自体が直接寿命を縮めることはほとんどありません。 末期になっても、小脳症状以外の重い麻痺や嚥下障害が出ることは稀で、他の型と比べると生命予後は比較的良好とされています。

4. 他のタイプ(SCA31やSCA3)との違い

よく似た病気との違いを知っておくと、自分の病気をより理解しやすくなります。

  • SCA31との違い: どちらも日本人に多く、症状が似ていますが、SCA31はさらに高齢(平均60歳前後)で発症します。また、SCA6ほど「眼振(目の揺れ)」が目立ちません。
  • マシャド・ジョセフ病(SCA3)との違い: SCA3では目が動きにくくなる(眼球運動制限)ことがありますが、SCA6では目の動き自体が止まってしまうことは稀です。また、SCA3のような「筋肉のつっぱり」や「びっくり眼」もSCA6にはありません。

5. 生活での対策と視覚の工夫

この病気と付き合っていくために、日常生活でできる工夫があります。

5-1. 転倒予防が最優先

転倒防止のため早めに杖や歩行器を使うことが大切

体幹(体の中心)のふらつきが目立つため、どうしても転倒しやすくなります。 進行は遅いですが、無理をせず、早めに杖や歩行器を使うことで、骨折などの二次的なトラブルを防ぐことができます。 「道具を使うのは負け」ではなく、「道具を使って安全に楽しむ」と考え方をシフトしてみましょう。

5-2. 目の症状への対策

現在、眼振や動揺視を和らげるためのお薬(アセタゾラミドなど)の研究が進められています。主治医の先生に相談してみるのも一つの方法です。 また、景色が揺れて辛い時は、無理に見ようとせず、目を閉じて休む時間をこまめに取ることも大切です。

5-3. 遺伝子診断について

SCA6は、第19番染色体にある「カルシウムチャネル」という遺伝子の異常が原因であることがわかっており、血液検査で確定診断が可能です。 ご家族への遺伝が心配な場合は、専門の遺伝カウンセリングを受けて、じっくりと相談することをお勧めします。

6.まとめ

SCA6は、目の症状やふらつきといった悩みはありますが、進行はゆっくりで、ご自身の時間を長く大切にできる病気です。

焦らず、一つ一つの症状と向き合いながら、今の生活を守っていきましょう。


脊髄小脳変性症の鍼灸外来

一般的な鍼灸院では行わない「体の状態を客観的に捉える方法」です。

脊髄小脳変性症の方の足部の温度分布を確認する様子

足部の温度変化を確認する検査の一例

「診断はついた。けれど、今の自分の状態がどうなのかは、よくわからない」

「薬を続ける以外に、何を意識すればいいのか、誰も教えてくれなかった」

私たちは、こうした行き場のない不安を抱える患者さんと40年間向き合ってきました。


当院では、サーモグラフィで全身の体温分布を可視化します。 脊髄小脳変性症の方では、 ご本人が感じている歩きにくさやふらつきと一致する形で、 手足の温度分布に左右差が見られることがあります。 その一致を一緒に確認することで、 「なぜ今の動きにくさが出ているのか」を整理する手がかりになります。

この検査には専門機器と解析技術が必要なため、一般的な鍼灸院で行われることはまずありません。 感覚や印象だけに頼らず、今の体の状態を落ち着いて見つめたい方のための情報提供の場として、 ご相談をお受けしています。

参考文献

この記事は、以下の資料に基づき作成されました。

  • 脊髄小脳変性症・多系統萎縮症診療ガイドライン2018(南江堂)
  • 脊髄小脳変性症のすべて(日本プランニングセンター)
  • 小脳と運動失調(中山書店)
  • 脊髄小脳変性症研究の進歩(科学評論社)

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この記事を書いた人

難治性疾患 認定鍼灸師 / 宮原 魁都

プロのサッカー選手を目指すも、膝の大怪我により夢を絶たれる。当時治療でお世話になった鍼灸師の影響があり、鍼灸師の道に進むことに。運動器疾患の治療を得意としているが、ずば抜けた根性と精神力で院長からの難題を次々クリアし、現在は難病の鍼治療でも成果を上げている。

難治性疾患 認定鍼灸師 / 宮原 魁都

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プロのサッカー選手を目指すも、膝の大怪我により夢を絶たれる。当時治療でお世話になった鍼灸師の影響があり、鍼灸師の道に進むことに。運動器疾患の治療を得意としているが、ずば抜けた根性と精神力で院長からの難題を次々クリアし、現在は難病の鍼治療でも成果を上げている。

難治性疾患 認定鍼灸師 / 宮原 魁都